よみコミ!

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漫画の感想ブログ。メジャーなものから隠れた良作まで幅広く読んでいます。誰かの新しい漫画の出会いの場になれば幸いです。

『図書館の大魔術師』本を愛する全ての人にこの物語を贈る

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「この本はまるで”扉”です!」

煌びやかな装丁と「とんがり帽子のアトリエ」でお馴染みの白浜鴎先生の推薦帯が目印のgood!アフタヌーンで連載中の王道ビブリオファンタジー。
図書館の大魔術師(1)(アフタヌーンKC)」1巻が発売されました。今回はその感想・レビューです。

正式名称は「圕の大魔術師」「くにがまえに書」で圕(としょかん)と読むのだそう。作者の泉光先生のこだわりを感じます。

いわゆるハイファンタジーというジャンル。作画面は言わずもがな高水準でそれだけで推せるレベルなんですが、ストーリーがまた今時珍しいぐらい真っすぐで読んでて気持ちがいいですね。転生でも、最初から勇者でも英雄でもない、一から始まる王道ファンタジー。

この漫画は連載開始当初から雑誌で追いかけていて単行本で二周目なんですが3話目4話目のこれからとてつもなく壮大な物語が始まるんだ!とこれでもかと読者を煽っていく熱い展開は何度読んでもたまらないですね。
読んでて「うおおおおお!!!」と心の中で唸りながら読んだのを今も鮮明に覚えています。

皆さん、本は好きでしょうか?
私は今でこそ漫画ばかり読んでいますが、小学6年生の頃は本の貸し出し回数が学年で2番目に多かったぐらい本の虫だった時期があります。休憩時間になると図書室にダッシュし目に付いた本を手に取りそのままダッシュでグラウンドで元気にサッカーという今思い返せばなんたるバイタリティー。

本はあまり読まない、活字は苦手だという人
、たとえば小さい頃、親や保育園・幼稚園の先生に何度も絵本を読んでくれとねだった経験はないでしょうか

または何となく手に取った小説や漫画にハマリ、時間を忘れて読みふけった経験はありませんか?

もしそんな経験があるならば私はこの『図書館の大魔術師』をオススメします。
目に映るもの全てが新鮮でキラキラと輝いていたあの頃を思い出す、「図書館の大魔術師」はそんな物語です。

 

あらすじ

アムンという小さな村に暮らす耳長の少年は本が大好きであったが、耳長で貧乏だった為、村の図書館を使うことができなかった。そんな少年は差別が存在しない本の都・アフツァックに行くことを夢見る。ある日、少年は憧れのアフツァックの図書館で働く司書(カフナ)と出会う。この司書との出会いが、少年の運命を大きく変えることに──。孤独な少年が未来を切り拓く、異世界ビブリオファンタジー堂々開幕!!

 <試し読み>

www.moae.jp

 

僕が憧れた物語の主人公

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特徴的な耳と貧乏な家庭のために周りから差別を受けてきた少年は、辛い現実の中でいつか自分の前に物語に出てくるような "主人公"が現れてこの嫌な世界から冒険に連れ出してくれる、そう信じていました。

そんな少年の目の前に現れた、本の都アフツァックの中央圕からやってきたセドナ
物語に出てくるような不思議な魔術を使い、凛々しく勇敢な彼女との出会いが少年の運命を大きく変えていきます。

 

細部までこだわった緻密な作画

「図書館の大魔術師」の魅力はなんといっても細部までこだわった設定壮大な世界観、それをそれを支える圧倒的な画力にあります。

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アフツァックの図書館で働く司書の仕事内容は守護室、渉外室、修復室などこれから登場するであろう圕の部署は計12室。
紙の単行本のカバー裏には頭の飾りで見分ける階級の違いや部署ごとの模様、序盤に描かれたシャグラザットの冒険についての設定なども掲載され作者の本気度が伺えます。


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木々一本一本、魔術の紋様、大蛇や怪鳥、一角獣、そのどれもが美しく、思わず息がこぼれます。
今回はプロローグということで世界観についての説明もそれなりに長々と書か
れていますが、要所では画力を生かした一枚絵で読者を圧倒してきます。美しい...


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2巻以降もその美しい作画に魅了されることになりそうです。
こうした
魔法や幻獣は勿論、妖精みたいな種族も出てくるのだけど、一方で街並みから衣装や小物類のデザインは凄くリアルで精緻に描かれていて、なんというか非現実感と現実感のバランスが絶妙で面白いです。

そして現実感という点では、司書が語る施しへの考え方がイスラム圏とかインドとかの喜捨というものにおそらく基づいており、現実に即した言動があると一気に異世界が現実味を帯びてきて、読むのが楽しい。
そんなリアルさを感じさせながら私たち読者を「非日常の世界」へと誘ってくれる漫画が面白くないわけがない!


ここで1巻で少年よりも主人公をやってるセドナさんの名言の数々をご覧いただこう。



「この日この時が運命だった そのほうがずっと素敵だろ?」

「自分を過少評価しちゃダメだ 君にしかできないことが必ずある」

「勇者は勇者のように振る舞うから勇者になり 物語の主人公は主人公のように振る舞うから主人公でいられる」


少し臭い台詞だけど何かにつまずいたとき、くじけそうなときに、その言葉はどんな魔法よりも心を支えます。名もない少年が交わした約束を果たすため、気高い主人公であろうと決意し、駆け抜ける疾走感は何度も読んでも心が震えます。

 

 

原作「風のカフナ」の謎

「図書館の大魔術師」には多くの伏線と謎が残されています。
まずこの漫画を読んでいて気になったのが原作「風のカフナ」という表記。これはグーグルで調べても著作が出てこないんですよね。

カフナは様々な分野の専門家を意味する言葉で、作中だと司書を意味します。
そして作中では司書であるセドナが風の魔術師と言われています。

これらから推測するにおそらくこの物語そのものが後世の人によって書かれた創作物、あるいは伝記なんじゃないかと推測しています。つまり作中作みたいな状態。
この推測の根拠となるのが「図書館の大魔術師」単行本の冒頭に挿し込まれたこの一文。

「この物語を 私の英雄のために」
——ソフィーシェイム ——「風のカフナ」冒頭の言葉


検索してもやはりソフィ=シェイムなる人物は出てきません。濱田泰斗という名前もそれらしき人物は出てきません。
して「私の英雄」という言葉。おそらくそういうことでしょう。皆まで言うのも野暮なので控えますが物語の終盤に楽しみができました


その他にも大魔術師伝説の「ニガヨモギの使者」と呼ばれる災害、額の傷跡、耳長族の血が「半分」であること。これらの秘密が紐解かれるその瞬間がとても楽しみです。

 

 

この世界は書でできている

「本を愛する全ての人」というタイトルを付けたのはこの物語のとある考えに影響されたからです。それは「この世界が本、つまり書でできている」という考え方
作中ではこう述べられています。


多くの者が書から過去の意志を学び

時に共感し時に反発し

ある者は新たな書を作り

ある者は指導者となり人を動かす

仮に字が読めなくても書の影響から逃れて生きることは決してできない

最初の書は人が作ったかもしれない

けれどもすぐにその立場は逆になった

書が人を造り 書が世界を創っているんだ


最近本の価値が著しく低迷する事件が日本で多発しています。それとこの「図書館の大魔術師」で起こっている「ニガヨモギの使者」の話がとても別世界の話だと思えないのです。

「非日常さ」がこの作品の魅力だとする一方で、これはもしかすると10年後、20年後の未来の話かもしれない。そんな「起こりうる日常」もまた同時に感じます。


これは今、本に価値を感じている人にしか通じないかもしれない。だけど本が好きだという人、本を読んで楽しかった経験がある人、本に救われた経験がある人なら思うことがあると私は信じています。

誰かが物語の主人公のように問題を解決してくれるだろうと指をくわえて待っていた人が、僕が、私が、俺がと自らが主人公として己の力で物語を動かそうとするならば、世界は変わりはじめます。

『図書館の大魔術師』は本の大切さを知り、自らが主人公となり行動したくなるようなワクワクが一杯に詰まったお話です。

 

新しい本は未知への扉

 

もっと本が読みたい!! 

 

そんな幼い頃の無邪気な探求心を呼び起こします。 

また『図書館の大魔術師』では本と図書館がモチーフにされてることもあり資料修復の手順や、本の歴史についても触れています。
かつて粘土板や木簡に綴られ、巻子本が生まれ、冊子体が生まれた経緯。写字生が手書きで書いていたころから活版印刷による本の時代へ。そんな書誌学のお話もあります

そんなトリビアにもぜひ注目してみて下さい。

この1巻では物語の壮大なプロローグとなっていますがこの巻だけで一本映画を撮れそうなぐらい濃いワクワクが詰まっています。
常に光となって気高くあろうとする者を奮い立たせるような確かな言葉の力強さに溢れた一作です。


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長く険しくも光り輝く物語への門出の言葉は演出過多と言えるぐらい華々しい。
誰か自分を救ってくれる主人公が現れることを待ち望んでいた少年が、自らが主人公となり夢を持ち旅立とうとする。そんなときぐらい格好つけたっていいじゃないか。

私はこの物語を読み、”誰か”ではなく”自ら”が動き出そうと思った。そして本を大事にしようと思った。

私は本の力を信じている。本の価値が薄れつつある今、そんな考えは古臭いだろうか。私はそう思わない。『図書館の大魔術師』を読んで改めてそう思った。

この本はまるで扉だ。扉を開けたその先に無限の可能性が広がっている。
その可能性は誰の下にもキラキラと光輝く。

本を愛する人、かつて愛した人、全ての人々にこの物語を私は贈りたい。

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そして何よりもシオくんのこの純粋な笑顔!この笑顔を大切にしたい!そう思ったらぜひ共に応援しましょう!
これより始まる長い長い物語の序章に立ち会いませんか?本の価値について、読む者に希望と活力を与えるお話。

 

『図書館の大魔術師』オススメの漫画です。