よみコミ!

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漫画の感想ブログ。メジャーなものから隠れた良作まで幅広く読んでいます。誰かの新しい漫画の出会いの場になれば幸いです。

スメルズライクグリーンスピリットで考えるBLの面白いこと・苦手なこと

今回は永井三郎さんの『スメルズライクグリーンスピリット』sideA/sideBの感想・レビューです。

「漫画」と名の付くものなら何でも好きで、グルメ、ラブコメ、スポーツ、デスゲーム、エロ漫画、少女漫画、百合、日常物、ギャグ、バトル、どんなジャンルでも面白いと聞けば即座に読みます!!!
と元気に言いたいところなんですが唯一苦手なジャンルがありました。それがBLです。

ただ大した理由もなく、なんとなく苦手意識だけで避けるのは自分の主義的にあまり好ましくないなあと思い「挿入シーンがほぼない」という制約つきで面白いBLを聞いたところオススメされたのがこの『スメルズライクグリーンスピリット』でした。

 

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失礼な話をすると、面白いと言っても苦手なジャンルだしなあとそんなに期待していなかったのですが、これが思いのほか面白かった。
そしてこの作品を読むことで、漠然と苦手意識のあったBLの「どこが苦手で」「どんなBLなら面白い」と言えるのか言語化ができたのでブログに記録しようと思いたちました。

BLを嗜む紳士淑女にとって気にくわない部分も多少あるかと思いますが、寛大な心で読んでもらえると助かります。
そしてこの記事が苦手なジャンルに対して前向きな気持ちで理解を示すための一助になればとても嬉しいです。

前置きが長くなりましたがつらつらと書いていきます。
若干ネタバレまじえて紹介するので未読の方はよろしくお願いします。

 

あらすじ

ド田舎の学生・三島は同級生からイジメられていた。理由は三島が“ホモっぽい”から。
実際に男性が好きな三島は抵抗もせず、隠れてする女装だけが心の拠り所だった。

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ある日、三島が屋上にいると、以前なくした口紅を持ったイジメグループのリーダー・桐野を目撃する。この出来事をきっかけに徐々に物語は進展していきます。

この世界のどこかで“本当の自分”でいられる場所を求めた少年達の、今、一番伝えたい青春ストーリー。
このお話では三島、桐野、夢野、そして柳田先生、4人の「男性が好きな男性」が登場します。

 

 

BLのここが面白い!心情描写の繊細さ

BLをいくつか読んできてこれはいいと思った点は心情描写の繊細さです。
これは女性作家に多く見られる傾向なんですが、これは男性にはなかなか真似できないととても評価しています。


上記の記事で紹介されている羽海野チカ中村明日美子、最近だとOp‐オプ‐ 夜明至の色のない日々(1) (イブニングKC)を出したヨネダコウなど一般誌なら全く問題なく楽しめることはよくありました。
BLに限らないのなら『あさひなぐ』『BEASTARS』『やがて君になる』など巧みな心情描写が魅力な女性作家は数多くいます。

BL作家はその多くが女性であり、男性であっても心は女性という人がほとんどです。
『スメルズライクグリーンスピリット』の永井三郎さんも例に漏れずそうした強みを生かしたストーリーが秀逸でした。

序盤こそギャグ要素や設定の苦しさにsideAでは表面的に感じた部分も否めず「うん、まあ、、」と歯切れの悪い気持ちもありましたが、sideBではそうした不満点をバッサバッサと斬り倒すように深層に踏み込んでくれてsideAの気に食わなさを消化してくれたのが素晴らしい。

特に良かったのが柳田先生が「入らないよォ三島ァ」「入れてくれよォ三島ァ」と自分にも言い聞かせているようなシーン。

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親にも配偶者にも同性愛者である自分を受け入れてもらえず、遂に心のタガが外れてしまった柳田先生はこの物語の悪役であり、物語の小道具として考えてもあまりにも救いがなさすぎる結末を迎えることになる。

ここら辺のバランスが絶妙でした。柳田先生を救いようのない退場劇にすることによって、三島たちが己の性とどう向きあうべきなのか再認識させ、ただの逃避行でも、苦い思い出でもない、新たな一歩を進ませる前向きな話に見事に着地を成功させています。

「光」あるところには必ず「影」が存在するように、この影の部分を描かなければここまで多くの人に愛される作品にはならなかったのではと感じました。

本作では(特にsideBで)同性愛者であるがゆえの本当の自分をさらけ出せない辛さ、心の叫びがよく描かれていて、それを内に秘めず外に吐き出すことですっきりした読後感に仕上げている。ここが作品の魅力に感じます。

 

 

BLのここが面白い!性別にとらわれない「好き」の形

性別にとらわれない生き方には偏見や差別など様々な壁がつきまとってきます。

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壁の違いはありますが少女漫画で年の差や身分の差を乗り越えて結ばれるラブストーリーはよくありますよね。
本来同性同士が両想いになることはまれです。
異性よりも高い壁のあるBLが、壁を乗り越えてくるんだから面白くならないわけがない。

偏見に負けない愛の形を見つけようとする主人公たちは未熟ながらも共感することも多く、応援したくなる人物ばかりでした。
ただ短編も多いBLでここまで掘り下げて描ける作品が生まれるのって相当ハードル高くないか?
BLに対して幻想を追い求めすぎていた部分が根底にあったのだと今作で気付かされました。

じゃあライトで面白いと言えるものはどんな話だろうと考えると今まで読んできた百合漫画、そして今作『スメルズライクグリーンスピリット』にもヒントがありました。それがこの台詞です。

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「男だから」「女だから」抜きに誰かに恋するなんて結構すごい事じゃない?

意を決して男が好きと伝えた息子に対してこの返答ができる母親、強すぎる。

冒頭でも述べましたが百合漫画に対して苦手意識はあまりありません。
以前はBL同様苦手意識があったのですが『将来的に死んでくれ』『明るい記憶喪失』など「たまたま好きになったのが女の子だった
そんな性別にとらわれない「好き」の形が百合漫画にあることを知り、とどめに『やがて君になる』『熱帯魚は雪に焦がれる』を読むことで私の中にある苦手意識は徐々に減っていきました。

BLにもそんなライト寄りの作品が出てくればいいなあと個人的に思います。
もし一般誌でそんな単純明快で「たまたま好きになったのが男だった」というような作品があればBLへの意識が変わり、もっと楽しめる作品が増えるかもしれない。
『スメルズライクグリーンスピリット』はそんな可能性を投げかけてくれる作品でした。

 

 

BLのここが苦手!お尻はもっと大事に扱って!

苦手と言いつつ面白い部分を書いてきたので今度はBLの苦手な部分について書きます。

本作を読んで、BLが苦手と感じる理由の大部分は「そもそもお尻はそんなものを挿れるようになってない」という生物の本能による警告であることに気付かされました。

中高生の頃は初めて買った携帯で真っ先に「エロ」「おっ〇い」「ち〇こ」などを検索ワードに入れて「なるほどなるほど~」とうなずいたり、iPadに落としたAVを学校に持ってきて友達と語り合ったりと誰しもが性欲の化身だったことでしょう。

知識ばかり増えて空砲ばかりを連発していると、穴があったら入りたいという気持ちになりますよね(解釈は任せます)。
しかしドラえもんで思い描かれた頃の21世紀と今がだいぶ違うように理想と現実はだいたい違うものです。


初めてできた彼女や彼氏にしてもらうパイ〇リやフェ〇は思っていたほど気持ち良くないし、女性も経験が少ないうちは痛いだけなんてのが常です。いわんやお尻の穴なんて。
それでも挿れたいんだ!!!!!!という熱意のあるものだけが様々なデメリットを理解したうえで、手間暇をかけ、ようやく通れる狭き門。それがア〇ル〇ックスだと個人的に思うのです。

先ほどBLの面白いところに心情描写の繊細さを挙げたんですが、肝心の性行為の描写だけファンタジーな作品が非常に多い。そこが引っかかる部分でした。
最初からファンタジーならファンタジーと割り切って読めるんです。
ただ過程が繊細だからこそ最後までリアルさを期待してしまう。だから「なんでそこから急に喘ぐんだよ!初めてとちゃうんかい!」と突っ込みを入れて、スッと冷めてたんだなと気付きました。

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今作では「自分の好き」とは何なのかを考えていく過程で、「人として好き」でも「身体は嫌い」というミスマッチに悩み本編では最後まですんなりいきません。
私はBLの挿入シーンに違和感を抱きやすいので、この部分をクリアできたのが冷めることなく楽しめた要因でした。

もし私のように興味はあるけどいまいちハマれずにいるBL初心者がいれば、この歪さをクリアできる作品があれば面白いと言ってくれるかもしれません。
どのジャンルにも言えるのですが、人にオススメするときのポイントは相手のレベルや興味関心に合わせたものを勧める。これに尽きるのではないでしょうか。

いきなりお尻にイチモツを挿入しようとしてもまず入りません。
指が1本2本と入るようになってようやく次の段階に移るように、少しずつ沼へと引きずり込んでいきましょう。

人の性癖はお尻の穴のようにデリケートです。
慌ててしまい相手も自分も傷ついてしまわないように、大事に扱っていきましょう。
そうすればきっとお互いがけつのあなの大きい人物になる。そう私は考えます。

 

 

おわりに

 以上が私の考えるBLの面白いこと・苦手なことでした。
まだまだ苦手な意識は抜けきらないBLというジャンルですが、今作を読んで全く読めないジャンルではないことに気付けたのは大きな収穫でした。

まだまだ未開拓のジャンルなので見過ごしていた名作や良作がこれから見つけられるかもしれないと思うとワクワクしますね。
もしこのブログを読んで面白そう、ちょっと苦手なジャンルでも挑戦してみようと思ったら嬉しいです。

『スメルズライクグリーンスピリット』はsideA sideBの全2巻構成でBLに苦手意識があった自分でも面白いと思えました。
オススメしてくださった方本当にありがとうございます。私からもオススメの一作です。

 

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