よみコミ!

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漫画の感想ブログ。メジャーなものから隠れた良作まで幅広く読んでいます。誰かの新しい漫画の出会いの場になれば幸いです。

『北北西に曇と往け』胸のすくような旅と探偵の物語

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何か新しい 見たことないものを見て 心底びっくりしたくて来たんだ

今回は入江亜季先生の最新作『北北西に曇と往け』の感想です。
1巻からその素敵な世界観、残された疑念にこれからどうなるんだろうとワクワクしていましたが2巻は更にキラキラと世界が輝くようでした。

前作『乱と灰色の世界 1巻 (BEAM COMIX)』から2年ぶりの新作ということでファンも多大な期待を寄せていたと思います。
ご安心ください。少年もおじ様も美女も相変わらず色気たっぷり。普通なら面白みのない、何気ないシーンに作者のセンスの良さを感じさせる魅力が溢れています。

読めばきっとあなたも物語の舞台であるアイスランドに訪れてみたくなる。
そんな胸のすくような探偵活劇『北北西に曇と往け』の感想です。

 

 

 あらすじ

事舞台はアイスランド島、北緯64度のランズ・エンド。17歳の主人公・御山慧には3つの秘密があった。
ひとつ、クルマと話ができる。ふたつ、美人な女の子が苦手。みっつ、その職業は、探偵――。
あるときは逃げ出した飼い犬を連れ戻し、またあるときはひと目ぼれの相手を探し出す。愛車ジムニーを駆りながら、胸のすくような探偵活劇が、いま始まる!
若き魔法使いの成長を描いた『乱と灰色の世界』から2年。入江亜季の最新作は極北の大地が舞台の“エブリデイ・ワンダー”!!

 

 

異能の美青年探偵・御山慧

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主人公の御山慧(みやまけい)は切れ長の眼にモデルのようなスマートな体型の惚れ惚れするような美青年。
日本人でありながらアイスランドのとある町で暮らす彼にはある秘密がありました。それは機械の声が聞こえること。

機械の声が聞こえるなんて普通の人には到底理解されない能力を持っていること、また人一倍感受性が強いためか、親友以外には誰にも話していない様子。
そういう背景からかミステリアスな雰囲気を醸し出しています。

1巻ではそんな彼を取り巻く理解あるちょいワルな祖父不思議な美女とのアイスランド紀行になるかと思いきや、後半からなにやら不穏な雰囲気に。

 

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行方不明の弟を探す警察の登場に、弟との感動の再会もどこかしこりを残し、物語は展開していくというのが話の筋の模様。

 

アイスランドと自然

ここからどんな展開が待ち受けるのだろうと楽しみにしていたら、2巻はそこら辺にはほぼ触れることなく親友とのアイスランド観光編に突入します。
おそらく読んでない人からすると「ええ…」と困惑することでしょう。私もそうでした。

面白い漫画というのは魅力的なキャラはもちろん、引きの強さ、論理的な展開、意味深な伏線、読者に訴えかけるような迫力のある台詞や作画、そんな漫画こそ面白い。というのが自分の漫画観です。(もちろんジャンルによって見るポイントは異なる)

ただ多くの漫画に当たっていくと必ずしもそうした定義に当てはまらないものが出てきます。
そういう場合、多くは作者の伝えたいテーマが他にあって読者が誤認している、もしくは完全に路線変更した場合です。
『北北西に曇と往け』については前者で、一見本編に無関係な展開なのですが、この物語には作者がアイスランドを訪れて感激した経験が下地にあります。

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生き物の生きる力、道具の役割、人々が暮らし、訪れる地にある自然とは何なのか、アイスランド人の自然への思い、それらを作者が実際に見聞きし肌で感じたことを作品で伝えようとしている。
だからこそ2巻で期待と違う方向に話が進んでも面白いと感じた人は多いのではないでしょうか。

サスペンス要素というのも今後の展開に含まれるのは間違いないですし(2巻のアンケート葉書に書いてた)、少し肩の荷を落として日本では見られないような自然の恵みを作品を通して覗いてみてはいかがでしょうか。

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第一話の見開きの見渡す限り広がる荒原や、50メートルを越える高さまで到達する間欠泉、ゴールデンサークル、アイスランド語で大地の裂け目を意味するギャオなど植物も少ない火山と氷河の島アイスランド

そんな土地だからこそ育まれてきた自然への敬意をぜひ感じ取って欲しい。
そこで暮らす人々の朗らかさと美しさに思わず笑顔になることでしょう。

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2巻はそんなアイスランドの素晴らしいところを紹介しつつ次巻への含みも少なからず描写していました。
個人的にこのシーンにはおっとニヤニヤしましたね。

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なんちゅー顔してんだ(笑)
彼の女性への耐性は改善されるのでしょうか。そんなところもこれから楽しみです。

 

 

漫画のアソビと読み方の話

『北北西に曇と往け』でグーグル検索すると検索候補に「北北西に曇と往け 読み方」と表示されます。その気持ちとてもわかります。

(あれよく見たら雨雲(あまぐも)の雲じゃなく曇天(どんてん)の曇だ。もしかしてドンといけだったりするの…?)なんてあれこれ考えてました。

YouTubeに掲載されているCМに読み方の答えがありました。


入江亜季最新作『北北西に曇と往け』(ハルタコミックス)


他にも掲載誌のハルタにルビが振ってあるバージョンの存在を確認したところどうやら北北西に曇と往け(ほくほくせいにくもいけ)という読み方のようです。


話変えます。


『北北西に曇と往け』は装丁がかなり美しくて書店で思わず手に取った方という方も多いと思います。かくいう私自身も入江先生と気付く前に惹かれるものがあり装丁買いした張本人だったりします。

最近は電子書籍と紙の売り上げが逆転なんてニュースを聞いたりして、実際私自身も昨年購入した漫画の700冊近くは電子書籍だったりと着実に電子書籍の波は来ているのですが、いまだに紙も愛用しております。

完全に電子書籍に移行しない理由は作者の応援だったり、電子より紙で読む方が楽しめそうとか感情的な部分が多いです。もう一つの理由はこうした紙でしか手に入らないオマケだったりします。

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電子書籍の利便性やとにかく一円でも安くという考えも否定はしないですが、カバー裏のあとがきや四コマ漫画だったり、作中でプリンくん登場したり、こういう作者の手心に思いを馳せるのもたまには悪くないです。
ハルタは単行本にこういうアンケート葉書を挟むんですが、その中でもこの葉書はとても可愛らしくてお気に入りです。

もし偶然このブログをきっかけに興味を持つ人がいたら紙で買うことを選択肢の一つとして提案します。

 

おわりに

1巻のときは雰囲気が素敵だけど内容はまだ評価し難いというのが個人的な評価でした。それが2巻でハマって感想書こうと1巻読み返すと最初から面白く感じたり。あの頃の気持ちはどこへやら。人の心は気まぐれなものです。

そのときの気分や体調によって日々の幸福度や面白さは変化するものだと思います。
もし思ったよりハマらなかったという人は場所を変えてみたり、時には休むことも重要かもしれません。

この作品を最大限に楽しみたいという方は清涼感のある作画とハードボイルドさが魅力的なので晴れやかな午前中に読むことをお勧めします。

『北北西に曇と往け』を読むことでアイスランドに興味が沸いてきたり、清々しい気分になることを願っています。オススメの一作です。