よみコミ!

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漫画の感想ブログ。メジャーなものから隠れた良作まで幅広く読んでいます。誰かの新しい漫画の出会いの場になれば幸いです。

クジラックス『わんぴいす 完全読本』感想「俺たちはこの夏、最高に自由で、確かに今を生きていた」

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人気成人向け雑誌コミックLOや同人誌などで活躍するクジラックス先生の最新作『わんぴいす完全読本』がとらのあなメロンブックス各店で発売されている。

本作はシリーズ化を予定していたものの、諸事情により頓挫してしまったオリジナル同人誌『わんぴいす』の第1話~第8話までの構想やあらすじ、ネーム、キャラ設定などを氏自らが解説した同人誌。

一部が文章であるのはいささか残念ではあるが、衝撃の第一話を読んだ後のあの得も言われぬ感動を再び堪能できる喜びはそれでも十二分にあり、ファン必見の一冊になっている。

 
その一部内容を感想を交えながら紹介していこう。

 

あらすじ

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 主人公の一人である笹原は「ミニミニ子宮マン」というアカウント名でマジキチツイートを投稿し、日々のストレスを発散しているFラン大学生。
彼がオフ会で出会った仲間(便宜上、麦わらの一味と呼ぶ)との数々の冒険を通して描かれる愛と友情の青春冒険譚だ。

第1話"いくあてがないのなら"

第2話"夢なら醒めないで"

第3話"先生のツバおいしいです"

第4話"拝啓、小川茂男様"

第5話"ナレノハテ"

第6話"BROTHER"

第7話"オッス!オラ強引に処女膜メリメリィッ号"

第8話"ひまわり畑で捕まえて"

最終話"宝物"

エピローグ"受け継がれる意思"

わんぴいすはこのような構想で作られている。
某海賊漫画を彷彿させるストーリーでパロディネタもいくつか見受けられるが、作者なりのリスペクトを込めて作られている。

2話以降ではどのようにして彼らが仲間になっていったのか、登場人物の半生を振り返りながらストーリーは進行していく。
麦わらの一味がかけがえのない”宝物”を見つけたとき、あなたはどんな気持ちを抱くだろうか。


”真実を知った時、誰もがきっと涙する——”

 

飛び出る驚愕の名(迷)言の数々

名作にはその作品といえばこれ!という代表的な名言が数多く存在する。
某海賊漫画にも「人の夢は終わらねえ!」「愛してくれてありがとう」など数多くの名言が存在する。

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「もっとジブンに、正直に生きろや!」は「わんぴいす」第一話、なかなか一歩を踏み出せずにいる笹原に向けて木嶋が放った名言として一部で有名だ。
右手に掴んでいるものがなければより締まるのだが、シリアスと笑いはいつも紙一重だ。

2話以降にも数多くの名言が生まれている。
第4話"拝啓、小川茂男様"は屈指の神回で

「(中略)ワイはそれを永久指針(エターナルポーズ)と呼んどる。」

「なんでこの人エロ漫画みたいによくしゃべるんだ!?」

など小川茂男の特異さが際立つ名シーンの数々は作品の幅を広めている。

中でも、茂男が判決公判で言い放った台詞は何度読んでも頭からこびりついて離れない。
ぜひその驚愕の一言をその目で確かめていただきたい。

もしわんぴいすの台詞を日常で耳にすることがあれば、声をかけてあげよう。
それはきっと"ろりともだち"誕生の瞬間だ。

 

クロスオーバーする世界観

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本作では『がいがぁかうんたぁ』や『ろりともだち』などの過去作とクロスオーバーさせる手法をとっており、作者の懐の深さに驚かされる。
『がいがぁかうんたぁ』に登場する人気キャラ「小川茂男」はこちらでも強烈な存在感を放ち続ける。

湿布を貼ってまでも強行した女児レ〇プへの強い情熱は満身創痍の中、連続試合出場にこだわり続けた往年の金本選手(阪神タイガース)を彷彿させる。
そんな茂男と離れ離れになることで成長し、一皮むけた草野を見ると金本と新井(広島カープ)の師弟関係を思い出す。

茂男と草野は穴兄弟になることはなかったが、兄弟以上の絆で確かにつながっていた。
第4話は何度も読み返してしまう必見のエピソードだ。

 

 

彼らの半生を振り返る

 女児レ〇プの旅を続ける「麦わらの一味」であるが、元からそうした特殊な性癖が備わっていたわけではないことが本作では明らかにされる。

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彼らにもまた、夢や希望を抱いた時期があったのだ。
沼津が教師を目指した理由は、小学生時代イジメにあっているとき担任が助けてくれたからであり、この時はロリコンのロの字もなかった。という解説がなされるのは氏の演出で憎めない点だ。

彼らがした行為は決して許されるものではないが、彼らの半生を振り返ると、あの日、あの時、少しだけ歯車が狂わなければ、と物思うことがある。
良かれ悪かれそういう経験は誰にもあるだろう。

愛情がときに憎しみに変わる。弱者がさらに下の弱者を食い物にする。
クジラックスの漫画はエロ漫画ではあると同時に、人間社会に見られる現象の一部をよく観察し、ドラマに仕立て上げた社会派漫画でもある。

多くのファン、そしてアンチもまた存在するのは、そうしたリアルな視点で描かれる世界観に畏怖が生じるのだろう。
鋭い感性はときに毒にも薬にもなりうる。用法用量を正しく守り、あくまで創作として楽しんでいきたい。


話は変わるが、異性に恵まれず、長期間寝食を共にすると、なぜホモホモしい独特の雰囲気が生まれるのだろうか。
男には「裸の付き合い」なるものが存在し、その過程を経て、初めて分かりあえることが多々ある。

イチモツの大きさによっては相手を「さん付け」で呼ぶようになることがあるし、やはりどうしてもナニが小さかったり、剥けていないと卑屈になることもある。
『ろりともだち』でも同じサイズで良かったというやり取りが赤裸々に語られるが『わんぴいす』内ではそうした暗黙の序列みたいなものはあったのだろうか。少し気になった。

 

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いずれにせよ同性(同類)との安心感は、なかなか異性との間には生まれない。
彼らは友達ではなかったかもしれないが確かに"仲間"であった。

沼津以外にもこの旅にいたる経緯は各キャラに用意されている。
特にリーダーの木嶋のエピソードはその大半をネームに描き下ろしており、彼がわんぴいすの少女を探す旅に至った経緯は涙なしに読むことができない。

それぞれのドラマをみて再度1話目から読み返すのも楽しみ方の一つとして提案したい。

 

 

おわりに

冒頭でこれが漫画という形で発表されなかったのはいささか残念であると発言したが、意図やネタ元などの解説を読むと「こんなことまで考えて作られていたのか…」と驚かされる。
こうした手法(途中で断念→構想を発表)を何度も使われるのは流石に勘弁したいが、今後より深くクジラックスワールドを楽しむための導線として、新作を考察する手助けとなるだろう。
このような機会を読者に与えてくれたクジラックス先生に、私は感謝の言葉を贈りたい。

内容は決して真似してはいけないし、彼らの行為は断固として許されるものではない。そんな彼らも『わんぴいす 完全読本』を読むと憎むことができない。
彼らの中に行動原理や葛藤があり、それが仲間との冒険を通して見事に昇華していくのだから。読後感は驚くほど爽やかだ。

話づくりの発想の一つに「ギャップのある要素を組み合わせると面白くなる」というものがある。
そうした「チームものの青春冒険譚×でも少女レ〇プ」という不協和音さが面白いかもと思い描きだしたのが本作の意図としてあると作中で記されている。

「誰しもが己の物語の主役である」という言葉があるが、己の物語ですら主役になれないという悟っている人は少なからずいるだろう。
そうした本来主役になれなかったはずの男たちを見事に主役に仕立て上げたその手腕は、やはり唯一無二の存在として、これからも注目していきたい作家の一人である。

「題材が…」「エロ漫画は…」という人も、地雷でないなら読む価値はおおいにある。
クジラックスのファンならなおのことである。
破滅へ突き進む疾走感。最後に待つカタルシス
どれをとっても素晴らしいストーリーであるといえる。

『わんぴいす完全読本』は漫画こそネームのままですが、じっくりとストーリーを楽しむことができる内容でした。
まだ読んでない人はぜひその世界観に足を踏み入れてみて下さい。

 

www.melonbooks.co.jp

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