よみコミ!

漫画の感想ブログ。メジャーなものから隠れた良作まで幅広く読んでいます。誰かの新しい漫画の出会いの場になれば幸いです。

知と青春の競技クイズの世界へようこそ『ナナマルサンバツ』【感想】

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7月も下旬となり本格的に夏らしくなってきました。
夏休みに入った学生は部活で毎日汗を流す人、受験勉強に勤しむ人、海や花火大会などで仲間と盛り上がる人など様々な青春があります。

 

しかし青春はそれだけではありません。毎年夏に開催される全国高校生クイズは今年で37回目。大会では毎年高校生たちが熱い戦いが繰り広げ、視聴者を湧かせ、青春の1ページを刻んでいます。

今回はそんな知力・体力・時の運が勝負を左右する競技クイズの世界を描く漫画『ナナマルサンバツ』を感想をまじえながら紹介していきます。

問題があり、それに答える」という単純なようで実は奥深いクイズの世界。
スポーツでは味わえない面白さがそこにはあります。

【1巻の内容紹介】

入学早々、高校1年生の越山識が勧誘されたのは、怪しげな先輩が会長を務める「クイズ研究会」だった! 同級生の真理に引っ張られ、識が出会った競技クイズのめくるめく世界とは!? 熱血競技クイズ漫画登場! 

作者の紹介

 作者の杉基イクラさんは『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『サマーウォーズ』などのコミカライズで人気を博す。
現在ヤングエースで連載中のオリジナル作品『ナナマルサンバツ』では競技クイズという題材の珍しさだけにとどまらない面白さが話題となり2017年夏にアニメ化となりました。 

 

競技クイズって何?

競技クイズとは出題や解答方法に一定のルールがあり、早押し、ボード書き、一斉ペーパーなど様々な形式で競い合う。また出題される問題も人文・科学・地理・音楽・時事・サブカルチャー・芸能など多岐にわたります。

そのため学校の勉強だけにおさまらない豊富な知識と技術が要求される奥が深い競技です。頭の柔らかさを問われる「なぞなぞ」とは少し異なります。

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競技クイズの醍醐味はなんといっても対戦相手と競い合うことでしょう。テレビのクイズ番組で回答者より早く答えられたときなんか楽しいですよね。実際に目の前の対戦相手にいれば、その楽しさはさらに増しそうです。

とはいえ知力に長けた猛者が集う競技クイズの世界で「楽しさ」を知るには幾多の壁が立ち塞がります。

「クイズを学べ」というシンプルな言葉もまた、物語を読み進めるほど、笹島先輩の強さに触れていくほど、主人公・越山はクイズの奥深さに魅了されていきます。


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 「誰よりも早く答える」ためには様々な知識を吸収し、いわゆる「ベタ問題」と呼ばれる頻出問題に反射的に答えるようになったり

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序盤の文章だけで問題を読み取る技術が要求されます。
このように早押し問題では0.01秒の差が勝敗を分けるまさに真剣勝負の世界です。

この漫画ではこうした緊張感のある勝負とコミカルな描写が上手く、登場人物に思わず感情移入してしまうストーリー運びが見事です。

「うへ~」という台詞も言いたくなる気持ちも分かるけれど、頭の回転の速さや豊富な知識には努力の証が見え、そうした登場人物たちに尊敬と好感が持てます。

 

切磋琢磨しあう仲間たち

部活漫画の見所といえば、登場人物たちの成長です。困難に立ち向かいながら仲間と協力し、目標に向かう姿に読者は胸を打たれるものです。

ナナマルサンバツ』の面白さは登場人物たちの成長を文化系部活漫画ながらスポ根調で描いている点にあります。
 
主人公が通う文蔵高校のメンバーはそれぞれ力の差に悩みながらも、互いにカバーしあい、新参校ながら一歩一歩着実に成長を遂げる王道タイプ。

そして競い合う関東の高校には超進学校中高一貫校、男子校・女子校、公立進学校などの新興~強豪校があり、それぞれの高校の悩みや問題にスポットを当てながら全力で大会に挑戦していきます。
 
切磋琢磨しあう仲間は何も同じ高校の部員だけとは限りません。他校にライバルという名の仲間がいたからこそ輝く青春模様や成長も部活漫画の見所の一つです。

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熱く、爽やかなストーリー

 『あさひなぐ』の記事でも書きましたが面白い漫画というのは誰かしらのキャラクターに共感でき、感情移入させるのが非常に上手い。

先輩・後輩の関係に悩んだり、伸び悩んだり、些細な一言に一喜一憂したり、何かしらのグループに所属したことがあるなら一度は経験したことがあると思います。

そうしたリアリティをドロドロしたものにせず、漫画らしいフィクションに落とし込みながら爽やかなストーリーに仕上がっているのもこの漫画の魅力の一つです。

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才能の片鱗をみせるシーンはゾクゾクします。初期の姿と成長した姿を比べると「気付いたら見違えていた」となることはままあります。私自身も幼少期のアルバムを親に見比べられながら「昔は可愛かったねえ」と言われたのをよく覚えています。

私のことは置いといて、一番見違えた登場人物は主人公の越山ではなく御来屋な気がします。初登場時はいけ好かないマイペース野郎だったのが数々の名勝負で湧かせ、部の先輩・後輩の壁を越えた交代劇はめちゃくちゃしびれました。

私が一番好きなキャラクターは御来屋ですが、おそらく読む人によって好きなキャラは変わると思います。引用画像だと登場人物がさほどいないですが優男やチャラ男、腐女子に老け…貫禄のある人、女装っ子、綺麗どころまで個性豊かで、必ずお気に入りのキャラが見つかると思います。

クイズの世界は変わってる?

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競技クイズの説明を軽く見て「別世界の話だ…」「なんか難しそう」と思う人がいるかもしれません。しかし『ナナマルサンバツ』を読み進めると、分かりやすく嚙み砕いた明快なストーリーで、クイズの世界は意外と身近な存在であることに気付かされます。

野球でもサッカーでも変化球やルールを覚えようとしたら何度も練習を重ねて少しずつ慣れていきますよね。そして練習の成果が実ったときに楽しい・面白いと感じる。クイズもまた同じことが言えるでしょう。誰もが最初は初心者でした。

ナナマルサンバツ』はメジャーなものでもマイナーなものでも、原点は楽しい・面白いからというシンプルな理由にすぎないことに気付かされます。シンプルな言葉に奥深さを感じるのもこの漫画の面白さの一つかもしれません。
 

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 少しずつできることが増えていくのが楽しい・面白いのはどの趣味や競技でも言えるでしょう。主人公・越山にとって、たまたまそうした楽しさとの出会いがクイズだった。ただそれだけにすぎません。

何かにハマるきっかけは本当に千差万別で「テレビで見た芸能人/スポーツ選手がかっこよかった」「絵が上手い/足が速いと褒められた」「親や兄弟がやっていて楽しそうだった」「友人に誘われて」など例を挙げたらきりがありません。

たった1問だけど答えられたことが嬉しい。そんなきっかけを大事にしたいですね。
もしかしたらこの漫画がきっかけでクイズにハマった人もいるかもしれません。毎回巻末には50問のクイズが収録されています。何問正解できるかぜひ挑戦してみてください。クイズの世界はすぐ目の前にあります。


それでは今回はこの辺で、最後の締めはやはりこの台詞でしょう。

 

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