よみコミ!

漫画の感想ブログ。メジャーなものから隠れた良作まで幅広く読んでいます。誰かの新しい漫画の出会いの場になれば幸いです。

『マイホームヒーロー』感想 家族のために完全犯罪を遂行せよ!

 

やってはいけないことは世の中に沢山あります。

お金を払わず商品を持って出てはいけないし
円満な関係を築くためには相手を尊重し、大事に扱わなくてはいけません。
「そんなの当然だ」という人が大半でしょう。ぜひ当然のままでいて下さい。


しかし世の中には常識が通用しない理不尽なことが沢山あります。

 そんなときにはついイライラしてしまいこいつ死んでくれないかなとか会社爆発しないかななんてことを内心思うこともあるでしょう。
大抵は一晩寝たらどうでもよくなるんですけどね。

ただそんな理不尽が自分の大切なものを奪おうとしていたら?

目の前に命の危機が迫っていたら?

平穏な日々って案外難しいのかもしれません。



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今回紹介する『マイホームヒーロー』は、とある家族に突然のしかかってきた罪と罰、そして家族の絆の物語です。

 

あらすじ

頼れる妻と、ちょっと反抗期気味だけど可愛い高校生の娘。
鳥栖哲雄の人生はそれなりに幸せだった。娘の顔に殴打の傷を見つけるまでは。
「100万の命の上に俺は立っている」の山川直輝、「サイコメトラー」「でぶせん」の朝基まさしの異色コンビが描く、罪と罰、愛と戦いの物語、開幕!

 

 

その事件は、ある日突然に

主人公・鳥栖哲夫はおもちゃメーカーで働くサラリーマン。
趣味はミステリー小説を読んだり書いたりすること。

最近一人暮らしを始めた一人娘が心配でしょうがない、どこにでもいる家族でした。

 

娘に殴られた跡を見つけるまでは。

娘の初めての彼氏は、キレると平気で彼女の顔を殴るような男でした。

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事態はどんどん悪い方向へ向かいます。
娘の彼氏の延人は、実家の資産狙いに近づいてきたヤクザの息子

それだけでなく過去に殺害経験があることが発覚し(しかももみ消された)今まさに、娘が殺されそうな事態に直面します。

 


大切なものが壊されるのを見過ごすことができる人がどれだけいるでしょうか?
哲夫は延人を殴り殺してしてしまいます。


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第一発見者は哲夫の妻・歌仙。


正当防衛を警察に主張しようといったんは考えますが、ヤクザに身元がバレています。
自分はおろか、妻や娘にも復讐の魔の手が及ぶのではないか。

自分が殺したことがヤクザにバレてしまえば、今後家族が無事平穏に過ごせる保証はありません。それなら証拠を隠そう。

家族の罪と罰の物語はここから始まります。

 

 

 

いつか役立ちたくない!死体処理の知識が満載

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体格のいい成人男性ですから70キロぐらいはありそうです。
そんなものをほいほい移動させることは困難。

哲夫は趣味のミステリー小説の知識を生かしてなんとか死体を解体しようと試みます。

この解体方法がとんでもなかった。

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浴槽全体を鍋にして 死体を 煮込もうと思うんだ



とんでもない発想に驚くことはもちろんですが、実行するにあたって発生する諸問題を軽々とクリアしていくのも面白いです。

煮込む以外にも様々な処理方法の例や、2巻に収録予定の話では死体の臭い消しの仕方まで解説されており大変参考になります(なりたくない)

 

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全部入っちゃいました。

 

 

この作品の見所はやはり実際に実行できるのではないかと思えるほどのリアリティ。
これによっては読者はより現実感を持つようになり、多くの人が読める話に仕上がったように思います。
ある人は哲夫に、ある人は妻・歌仙に自己を投影させて、ここからどう乗り切るか考えるのも楽しいと思います。


リアルすぎる創作物は漫画『バクマン。』のPCP事件の例や、最近だとクジラックス先生が警察とお話する出来事があったりと正直ナイーブな部分ではあります。

しかし、その一部のために多数の意見が抑圧されるようなことはあってはならないですし、多くの読者を楽しませてくれる作品が世に出ないことの方が損失です。
OKを出した編集部を私は賞賛したいです。良い子の皆さんは楽しむだけに留めておきましょう。

 

ヤクザとの一進一退の攻防

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息子の足取りがつかめないまま、黙って指をくわえているままではありません。

鳥栖家に調査が入り、無関係を装うも勘の良い組員によって疑いの目を向けられます。

そんな厳しい監視の目をかいくぐろうと、哲夫とヤクザたちが行う様々な駆け引きもまた話に緊張感をもたらしています。

 

 

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あの手この手で証拠を掴もうとするヤクザ相手に、今できる最適の一手を選択していく哲夫たちは相当タフですが、罪の意識が全くないわけではありません。

自分は掃除中に遊んでてガラスを割った時のことを今でも思い出すのに、正当防衛とはいえ殺人を犯してしまった人は、いつまでそのときのことを思い出してしまうんでしょうか。

この道は果たして本当に破滅に続いているのか。
1巻の表紙は哲夫が雨に打たれて叫んでいるようなシーンです。
かなりかっこいい表紙に仕上がっていて、大変気に入っています。

ただ気になっている点はこのシーンが一切出てこないこと。

もしかするとこれから出てくる重要なシーンなのかもしれません。

 

各所で評判の声があがっています

週刊ヤングマガジン(通称ヤンマガ)を毎週読んでいるノンスタイルの井上さんも単行本で読んでいるようです。
一応補足しておくと、作画と原作を別々の人が描いているだけで原作の小説はありません。
原作の山川先生のもう一つの作品100万の命の上に俺は立っている(1) (講談社コミックス)は作風が大きく異なっていますが、今できる最適な一手のために合理的に行動できる点では同じです。
主人公の思考回路に惹かれるものがあれば読んでみてもいいかもしれません。

 

ちょっと重い感じの紹介になってしまったので補足。
担当者も言っていますが暗い、重い作品ではないです。多分。
緊張感のあるサスペンスドラマを見る感覚で楽しめます。


自分も絶対実写化すると思っています。面白い作品は正当な評価をされてほしいものです。そこのとこよろしくお願いします。

ちなみに単行本発売前から次にきてほしいマンガ2017 - よみコミ!で鉄板作品として紹介していました。
時間ある人は良かったら見てください(宣伝)

 

「ヒーロー」と冠するにはお父さんが一見地味なんですが、本当にかっこいいんです。
家族のためにも完全犯罪をやり遂げるという「覚悟」と、人を殺してしまったことに「罪の重み」が感じられるのも見所の一つです。

『マイホームヒーロー』はサスペンスが好きな若者だけでなく、家庭を持つような中年層にも読めるのではと個人的に考えます。
というのも家族でも恋人でも友人でも何か一つ大切なものを持つ人なら、「もし自分だったら」と何か思う部分がきっとあるはずです。

 

果たしてこの逃げ場のない罪と罰の物語はどういった展開を迎えるのか。

哲夫は一体どんな「ヒーロー」になっていくのか、要注目の一作です。